海外サッカーと雑誌について

 最近、海外サッカー雑誌の質が上がってきていることを感じており、自分が読んでいる雑誌と期待すること等を記載したいと思います(けっこうな長文記事になっています)。
※雑誌の内容等については自分自身の記憶に基づいて記載しているため、事実とは異なる場合があるかもしれません。ご容赦ください。
◎現在定期的に読んでいるのは、次の2冊。
〇footballista
〇SHUKYU Magazine
 この他に、WSDの選手名鑑とシーズン総括を毎シーズン購入。Chelsea Magazineもシーズンによっては、定期購読(今シーズンは購入していたつもりでしたが、しばらく経ってから購入されていなかったことに気づき断念)。
1 雑誌を読む目的
 自分自身が海外サッカーを本格的に見始めたのは、04-05シーズンから。つまり、モウリーニョ第1期の当初からです。
 その後は、チェルシーの試合については、ほぼ全試合観てきました。よって、そこそこの年数を観てきているわけで、見始めた頃と現在ではサッカーの見方等が変わり、求める情報が変わっています。

(1)第1段階【見始めた頃】

 最初はわかりやすくて、とっつきやすい内容である雑誌。WSD、WSM(すでに廃刊)、WSK(見始めた頃に発刊された記憶)あたりをよく読んでいました。
 これらの雑誌については、チームの戦力のランク化、移籍情報、理想のメンバー、有望な選手などについて見やすく整理されており、どのクラブにどんな選手がいるのか、誰がチェルシーにやって来るのだろうかとワクワクしながら読んでいました。併せて、サッカーの歴史についても定期的に紹介してくれるため、過去の主要選手、試合、サッカー史におけるターニングポイントを理解し、現在のサッカーを楽しむための基礎を学べます。
 当時は学生で、いずれか1冊しか購入する余裕はなく、内容や付録(誰がポスターになるのかも注目だった。なお、チェルシーの選手が使われることはめったになかった・・・。)から厳選の1冊を朝にコンビニで買って、学校で読み、理想のシステムやメンバーを想像したものです。
(2)第2段階【2,3年後】
 主要クラブのほとんどの選手名や特徴は理解できています。また、移籍情報については、雑誌やネットではさまざま憶測が流れますが、ほとんどは正しい情報か疑問に思えるものばかりだと気づきます。
 この頃になると、選手やクラブ、試合の背景をより深く知りたくなりました。選手へのインタビューが充実している雑誌、試合結果の背景を深掘りしてくれる雑誌を求め、WSDやfootballistaをよく読んでいました。
 とりわけ、WSDにおけるフリオ・サリナスがインタビューアーになる企画は、画一的なインタビューとは一味違って選手の内面を見せてくれる秀逸な企画でした。
(3)第3段階【それ以降】
 1つのテーマに対して仮説を立て、①各識者の考え、②各国のサッカー観による考え方の差異、③現在のトレンド、④サッカー史における変遷など多面的な角度から思考する雑誌を読みたくなります。
 現在読んでいる2誌がこれを満たしてくれることが多いように感じられます。
2 現在読んでいる雑誌について
(1)footballista (https://www.footballista.jp/)
 発刊当初は、海外サッカー雑誌なのに週刊誌という速報性を持ち、毎週の試合を質の高い記事で振り返られること、マニアックな選手へのインタビューなど海外サッカーマニアにはたまらない雑誌でした。ところが、紙面・価格のリニューアルごとに質が落ちていった印象でした。週刊誌から月刊誌に変わった時点で、マッチレポートからテーマを絞った特集記事を中心にすることに変え、深いところで海外サッカーを学べる素晴らしい雑誌に戻りました。しかしながら、それも一時的で次第に質が落ち、他誌との違いが曖昧になった時期が続きました。個人的にも、footballistaはずっとファンで定期購読を続けていましたが、毎回購入するほどのクオリティがなくなったと感じ、定期購読の更新をやめました。
 しかし、編集長が変わった時期あたりからでしょうか?再び「データ革命」、「戦術パラダイムシフト」、「メンタルのはなし」といったらしさ溢れる特集記事、海外で活躍するトップレベルのコーチによる分析や海外サイトの翻訳記事等見逃せないものばかり。いつかのマニアックで深くサッカーを理解できるfootballistaに戻った、むしろそれを超えるものが続いています(もちろん定期購読を再開)。
 現在は、やや翻訳記事が多いと感じられるところはある(日本人の執筆者を増やしてほしい)ものの、毎月の発行が待ち遠しい雑誌です。
(2)SHUKYU Magazine (http://shukyumagazine.com/)
 footballistaは、多くの海外サッカーマニアがご存知でしょうけど、この雑誌はまだあまり知られていないのではないでしょうか?しかし、この雑誌も素晴らしい!
 年2回発行のフットボールカルチャー誌で、海外サッカーに絞った雑誌ではありませんが、サッカーマニアならばきっと楽しめる内容であると思います。他誌とは全く別の視点から多面的にサッカーを考え、他では取り上げないような試みをしています。footballistaは戦術などの試合に直結するテーマを扱うのに対して、こちらはサッカーとは何か?といったサッカーそのものを追求する哲学的なアプローチをしている雑誌です。
 デザイン性に優れ、ページをめくるごとにユニークなアートワークを楽しめます。エンダースキーマとコラボグッズを出していたりもします。このデザインの秀逸さは、雑誌という特徴を活かした面白い試みだなと感じています。

 こういったデザインなどポスターにしてくれないかなあと思います。家に飾りたいくらい。
 ちなみに、最新号は「テクノロジー」特集。西村審判や槙野、長友にVARなどの最新テクノロジーに関するインタビューや、今や有名なSAPで働く職員へのインタビューもあり。内容的に興味深いのはもちろんなのですが、インタビュー記事の写真のチョイスが素晴らしいですね。西村審判の笛を吹く写真やカードを出す写真、選手インタビューでは石川の写真が特によかった。

 この雑誌らしい内容としては、勝負以外の価値基準でサッカーを考えるといったこと、身体リテラシーのあり方を考えてみるといったこと、前橋育英vs流通経済大柏の試合を文章一切なしで12ページ写真のみで振り返ること、以上のように独特のアプローチをしています。
 あとは、レッドスターFCというフランスの3部リーグのクラブ(フランスで2番目に古いクラブとのこと)がデジタルメディアとの提携で注目を浴びていると言うことで、クラブでクリエイティブ・ディレクターを務めるダビド・ベリオン(ユナイテッドでプレーしていた選手ですね。)のインタビュー。ファッションや音楽、アート、食とサッカーを組み合わせることの可能性を話しています。
3 期待すること
 雑誌の特徴は、あるテーマについて多面的な角度から切り込むといったように、時間をかけてじっくりと知識を深められる点にあると思います。好きなサッカーの視野を広げてくれるあっと思えるような記事に出会えたときのワクワク感はたまりませんし、普段観ている試合を違う視点から観られるようになるときさえあります。
 ネット社会の中、無料であらゆる情報を容易に入手できるようになりました。その中でお金を払ってでも読みたいと思えるような雑誌を作り継続して販売する苦労・ハードルは相当なものでしょう。ですので、いいものに対しては評価をし、できる限り多くの人に知ってもらえたらいいなと思います。
 今回このような記事を書いてみようと思ったのも、そういった思いからです。最近は面白いと思える雑誌がありますので、少しでも気になった方は、試しに一度読んでみてはいかがでしょうか。

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